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森のサウナ

2020/01/1
沢と溜りのある森にサウナ小屋をつくると同時に、周辺の森の環境を整える計画。森林や沢といった「そこにあるもの」で持続的な暮らしの実験ができるような環境創りを考えている。
サウナの設計にあたり、バルト三国、エストニア・ラトビア・リトアニアを旅した。様々なサウナを現地で体験し設計に活かす試み
エストニア、ヴォル地方で訪れたMooska farm のスモークサウナ

 

人の手でサウナをつくり,森を回復する
徳島県神山町でカフェを営むオーナーと周囲の人た ちの手仕事によってつくられた森の中のサウナ小屋 である.日本各地に見られるように,神山町の森に もスギが大量に植林されたまま放置されている.落 葉がなく光が差し込まない森には,下草が生えにく く,土壌を含めた生物多様性が成立しづらい.光の 射し込む多様な生態の森に回復するためには,針葉 樹の間伐を進められるよう,森にもっと親しみを持ち, 楽しめるきっかけづくりが大切である.そのための最 初の試みとしてサウナ小屋をつくることにした.計画 にあたり,森とサウナが共存するバルト三国のサウ ナ文化の知見を深めようと現地に赴いて体験した. 敷地には急峻な崖とそれを伝って流れる沢があり, 沢の溜りはサウナで暖まった体を冷ますのにちょうど よい深さがあった.道路から沢に沿って100mほど 山道を登った先の,かろうじてサウナの床面積が確 保できそうな平場を見つけ,セルフビルドで木造平 屋を建てることにした. サウナ室に設ける唯一の窓の位置を南斜面のスギ木 立が見える風景から決め,その風景に対しベンチを 平行に置き最大8人が向かい合って腰掛ける.中央 には薪ストーブが置かれ,その上で熱されたサウナ ストーンに水を掛け,水蒸気と熱を室内に満たすよ うになっている(ロウリュ).サウナ室と更衣室はふた つのボリュームに分け,その間に軒下空間を設けた. 雨宿りできる軒下はサウナ室へのアプローチになり, また上流へ通り抜ける山道の一部にもなっている. 敷地は,資材を搬入する道路から離れており,電気・ 上下水道といったインフラもないため,基礎は,コ ンクリート量を最小限にし,型枠の不要なブロックと 組み合わせる工法とした.構造材や仕上げ材は人が 持ち運びできる大きさに分割して計画した.また, その場所から取れるものを資材として最大限活用し ている.敷地を整地する時に出た岩を砕いて基礎の 砕石とし,間伐したスギは薪割りをして乾燥させ, サウナストーブの熱源とした.サウナには電気も水 道も引いておらず,薪ストーブがあるだけなので, 自然光を頼りに夜はロウソクなどで明かりをとり,沢 の水を使って,サウナストーンへロウリュをすること にしている. 間伐して空が明るくなった敷地には,鳥がやってくる ようになったと聞く.計画当初,森全体を生活の場 と見立てるイメージをオーナーと共有していた.サ ウナは,その最初の拠点であり,時間をかけて森を 回復しながら周辺環境を整えることを考えている. そして,あらゆる森にこのような試みを広げていくこ とを夢想している

 

名称 森のサウナ
所在地 徳島県神山町
用途 サウナ
構造 木造1階
延床面積 8.79㎡
事業主 カフェ オニヴァ
施工 カフェ オニヴァ
写真 鈴木久雄

 

掲載
新建築2020年1月号(新建築社)

 

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